この世界は五度ほろんだ。
五度目の崩壊のあと、なにもなくなったまっさらな世界にひとつの大きな穴が空いた。 その穴はやがて、巨大な洞窟になった。
洞窟を最奥まで進むと、そこには一度目の滅亡の折に絶えた『人間』―――なる生命体の、『心』―――なる形なきものが結晶化した物質つまり『宝石』―――が壁一面に煌めいている場所がある。
これから語られるのは、そのひとつひとつに宿る、ちいさな物語である。